子供が生まれ、日々の成長に嬉しかった毎日も、やがて思春期になると沢山の心配で頭を悩ませます。反抗期、成績、そして進路につながる夢がないと。。。。でもその夢は、親がしいたレールや、価値観をうえつけるのではなく、子供本来の直感を育てることで、夢を見つける力が出てくるのです。
親のドリームキラーが子供をつぶす
息子が中学生になった時。2度目の駐在に連れていき、日本人が誰もいない環境でも意欲的に頑張っているから大丈夫、と息子の心を深く考えることはありませんでした。息子はプロのアスリートになる!と意気込み、毎朝自主練をしたり、遠くまで習いに行ったり、自分を追い込んでいました。
そんな息子の頑張りを、私はどう思っていたのか。地元のチームでレギュラーにもなれないのに、なんでプロのアスリートなのか。もっと他で生かせる力はあるはずなのに。応援するどころか、内心そんな思いでいたのです。そう、ドリームキラーだったのかもしれません。
そんな大志を持っているのに、試合で思うように動けない息子にイライラして、こう動きなさいと喝を入れていた時もありました。駐在から1年が過ぎた頃。ついに息子は夏休みを前に、倒れました。全く動けなくなったのです。しゃべることもできず、部屋に閉じこもり、ゲームざんまいへと突入してしまいました。
事の異様さに驚いた私は、必死で解決策を求めて検索しまくりました。
カギは自己肯定感【自信を入れること】
オンラインでカウンセリングも受けてみました。でも、どん底である子供に、自分を振り返るワークができるはずがない。「本人に治る意志が無ければ無理です」という宣告。絶望感に襲われました。
ワークができなければ解決できないのか。絶望感でうちのめされながら、次なる解決を求めて毎日検索をしまくりました。ようやく見つけたのが、親の言葉で自信を入れるという先生のメソッドでした。
自信を入れる言葉かけの威力
子供の良さ、力に注目し、日々浴びせるように伝えていく。夏休みに入っていたこともあり、ゲームで昼夜逆転、変わり果てていた息子に、本来の良さ、優しさなどを伝え始めました。メモに書いて、部屋に入れたこともありました。そしてゲーム三昧では言葉が響かないと様子から判断し、ゲームをとりあげました。
何もやることがなくなった息子に、良さを伝える私の言葉が響き始め、どん底にいた息子の様子がみるみる変わり始めました。そうしてある日、ポツリとつぶやきました。「お菓子を焼きたい」と。お菓子なんぞ焼いたこともない、中学生男子です。何も手がつかなかったからゲームで気を紛らわせることしかできなかった息子に、自信がミリ単位で入っていき、ある日直感がおりたのでしょう。
「こうしてはいられない、何かできることをしてみたい。もう一度自分を取り戻したい。」そんな自分を突き動かす何かがでてきたのでしょう。焼いたこともないお菓子、という直感が降りてきたに違いないのです。
手仕事は自信を取り戻す
そこから一心不乱にレシピを検索しました。全く何も考えられず、動けなくなっていた息子に、レシピを検索する、という変化が生まれました。これは相当大きな変化でした。
息子は検索したレシピから、とりつかれたかのように毎日お菓子を焼き始めました。初めて焼いたお菓子。チョコクッキーだったか。甘い匂いが家中に広がり、倒れた息子の様子に疲れ切っていた家族にも、歓声があがりました。初めてなのにプロ級で、とびきり美味しいお菓子でした。あれほどお菓子の味をかみしめた時はありません。息子は気を良くしたのか、自信が少し増えたからか、検索を続け、クッキー各種、山型パン、ピザ、ケーキと、次々に成功させていきました。家族から喜ばれること。これは異国で一人頑張って自信をすり減らしていた息子にとって、大きな大きな自信になりました。
お菓子を焼く、実はたくさんの力の宝庫です。見ようとしなければ見えない力でもあります。片っ端から検索する力、丁寧にレシピ通りに仕上げる力、先を見通す力。準備する力。段取りする力。
お菓子作りを通して見えた、人生にも大切な、たくさんの力を息子に伝えていきました。
親の期待が子供をつぶす
息子は自信がからからだったのです。異国で神経をすり減らし、日本人一人で戦っていた日々。それを私が日々、たっぷりと共感すべきだったのです。大変な時こそ、普段よりもさらに多く、息子の頑張りに言葉かけを続けて自信を入れるべきでした。
プロアスリートになる、そんな野望も、なれるかなれないかなんてどうでもいい。その野望を持つこと自体が素晴らしいと考えて、一緒にワクワクすればよかったのです。そんな野望をもつほどのレベルじゃないし、もっとこうすればいいのに。そう思っていた期待は息子への責めとなり、ただでさえ厳しい環境で自分を責めていたであろう息子に、追い打ちの責めをかけていたにちがいないのです。
共感どころか、期待からの責め。自分に厳しい息子は、異国で何かを成し遂げたいと思うあまりに自分を追い込みすぎ、自信を使い果たした末に倒れたのでしょう。今も振り返ると申し訳なさでいっぱいです。
ひきこもり回復へのプロセス
倒れた夏休み中に勉強には向かえなかったけど、何か手を動かし、集中できるものをしたい。それは息子の回復への本能だったのでしょう。手を動かして没頭することで脳が動き、自信を取り戻す、本当に大切な過程でした。毎日焼き上げるお菓子の匂いは、家中に広がり、疲れ切った家族を喜ばせ、賞賛の声をいっぱいもらい、カラカラだった息子の自信の水が、少しずつ増えていきました。
次に息子が考えたのは、「工作」でした。ホームセンターへ行き、一心不乱にいろんな工作を作り始めました。作業することで集中でき、自分を責め続ける時間から解放されたかったのでしょう。手先が器用、きっちり寸法を測り、作りたいものをイメージ通りに作り上げる。息子のそんな力も伝えてきました。
一旦自信を使い切ったあとの心の回復には、時間がかかります。勉強というのは、その自信が十分満たされたあと、最後に向かえるものだと、わかりました。行動が止まるということは、相当な脳へのダメージだからです。でも、手を動かすことは、脳を動かし、自信を取り戻す、集中力を取り戻すことに大きくつながりました。
親が自信を入れる言葉で、本能的に自分を回復させる道を、思いついたのでしょう。もう一度自分をためしたい、生きたい、こんなことをしていられない。魂の叫びが見えるようでした。
一歩の行動を起こす直感。それは親しかできない自信を入れる言葉かけにより、おりてくるもの。
長い夏休みの間に、自信をためていき、新しく生まれ変わった息子は、新年度に合わせて勇気を振り絞って新しい高校へ飛び込んでいきました。
夢を探す「自分探し」の挑戦へ
その後日本の高校に編入した後、原因不明の体調不良から思うように勉強できず、試練が次々に襲いましたが、なんとか大学へ進学。大学生の今、たくさんのアルバイトで社会経験をつみ、たくさんの仲間をつなぎ、小学生時代からの夢だった事業を起こしたり、自分探しの挑戦中です。
今までの回り道や、何度もどん底、試練から這い上がってきた力は、無駄にならない、親の声かけで自信をためれば財産になります。自分にも何かできるんじゃないか、自分にできることはなんだろう。そう自分に問いかけられるのは、自分を支える自信があってこそ。その自信は、初めからあるわけではなく、親の声かけからためることができるのです。
大人でも、夢を初めから見つけ、そのために毎年着々とまい進している。そんな人は少ないのではないのでしょうか。まして、経験の少ない子供が、夢を簡単に見つけられるわけはない。でも、試練があったからこそ、そしてその時に親がかけ続けた言葉が、自分探しの夢につながります。
挫折に見えることも、実は生かし方一つで大きなチャンスにつながります。言葉の力、お子様の未来を信じましょう。光はもうすぐです。