不登校や引きこもりで自信とエネルギーが無い時、大抵向かうのがゲームです。ゲームを取り上げるのは可哀そうという声もありますが、受け身ではなく、脳を主体的に動かすことがひきこもり脱出のカギです。
その突破口の一つがお菓子作りです。
閉じこもりがちのひきこもり中は、自分へのダメ出しを繰り返し、自信が空っぽです。思考力も弱くなります。ひきこもりが長くなるほど、感性を取り戻して自信を増やすことが、とても大切になっていきます。

ここでは、当時中学生だった息子が自暴自棄になって部屋へ引きこもった時に、
【生きる力になったお菓子作り】についてお話していきます。
お菓子作りは
・思考を取り戻し、
・家族に喜ばれて自信を増やし、
・ワクワク感が感性を動かし、
再び社会へ出ていく力をつけた、魔法のセラピーでした。
ひきこもり克服への道
存在を嬉しいと伝える

不登校・ひきこもり中に行動が止まっていれば、思考も止まりがちです。
自信がカラカラになり、自暴自棄になっている状態が多くあります。そんな時、「お菓子一緒に焼く?」と言って一緒にできる間柄ならば、話は早いのですが、ゲーム三昧だったり家族を避けていたり、昼夜逆転だったりすると、言葉が子供に届きません。
ましてお菓子を焼いてみよう!と思うような一歩のエネルギーもありません。
なんとかして言葉を届けるべく、○○ちゃんがいてお母さんは本当に嬉しい、という手紙を書いたり、メモをドアの下から入れたり、自信を一滴一滴入れる努力を続けます。
ゲーム依存症で危ない場合は、専門家に聞いてゲームへの時間を最小限にするか取り上げるなど、まずゲーム対策が必要です。
自信を入れる
ゲーム対策のあとは、ひたすら良さを伝えます。自信がカラカラに乾いている状態にどれだけ自信がたまっていくかは、子供の状況次第や、かけた言葉の質と量次第ですが、自信が満ちてくると、、、、

自信がたまってくると、自分を生かす直感がおります。
ゲームが無ければ、親がかける言葉も心に響き始めます。
自信がすっからかんで行動できなくなっていた状態から、何かやってみよう。そんな直感がおりてきます。
ここでは、当時中学生だった息子がある日突然倒れてひきこもり、
その後、自分の直感からお菓子作りを始め、再び自分の可能性を信じて歩み始めた話を書いていきます。
自暴自棄だった息子が自信を取り戻して進学した話


今から10年以上前。息子が中学生の時でした。
当時夫の転勤で、私たち家族は日本人が殆どいない土地に住んでいました。
自分に厳しく、勉強も部活も頑張っていた息子に私は安心し、「部活でもっとうまくなりたい」という息子の向上心を逆にあおっていたような日々でした。
それだけ向上心があるのに、なんで結果が出ないのか。
試合になると自信のない動きを繰り返す息子に、厳しいことばかり言っていました。
息子がだんだん顔色が悪くなり、動きも悪くなっていたことに私たち親は気づかなかったのです。


ある日の帰宅後、息子はばたっと倒れました。夏休み前だったこともありますが、その日を境に行動できなくなり、部屋に閉じこもりました。昼夜逆転とゲーム三昧です。
当時原因が分からず、日に日に悪化していく息子の様子に私はパニックになりました。息子が変わってしまった。何が起こったのか。
毎日死にそうになりながら検索しまくってたどりついたのは、言葉で自信を入れるということでした。
全く考えたこともありませんでした。
早速言葉がけを始め、私は息子に手紙を書きました。



お母さんはね、命をかけて生んだんだよ。
生まれてきてくれてありがとう。
普段そんなことは言えません。
でも、あれほど頑張ってきた姿、
これまでたくさんの試練を乗り越えてきた姿、
元気いっぱいで友達とエネルギッシュに遊んでいた姿。
思い浮かぶのはそんなシーンばかりです。


このままおわってしまうのか。息子はどうなるのか。どこで子育てを間違えたんだろう。
もがき苦しむ毎日でした。振り返れば、
日本人がいないような過酷な状況で、私は息子に本当の共感が全く足りなかった。
ただでさえ自信をすり減らす状況で、自信を入れるどころか、期待が責めになり、私は自信を大きく減らすことをしていた。
後悔ばかりが先に立ち、申し訳ないという思いでいっぱいでした。
必死で毎日手紙をドアの下から入れたり、部屋から出てきたら声をかけていきました。
お菓子を焼きたい


そんなある日。
部屋から出てきた息子は、ぽつりとつぶやきました。
「お菓子を焼きたい。」
驚きました。
久しぶりに、息子に何かしたいと思う力が戻ってきた!
言葉がけを始めたら、一歩の変化があった!!
まだ生きる力が残っていた!!
安堵し、心の底から喜んだのを今も鮮明に覚えています。
思考力を動かすお菓子作り


お菓子作りには、たくさんの力がつまっています。
- どんなお菓子がいいか、検索する力
- 工程をしっかり読み込む力
- 材料を量って揃える
- 先を見通す力
- 仕上がりをイメージする力
- 段取りよくすすめる力など
何より、作業中には集中力がいります。
息子は一心不乱にお菓子作りに没頭し、鬼気迫るような時間でした。
もう一度自分を取り戻したい!
生きるエネルギーを取り戻したい
そんな息子の気迫が見えるようでした。
息子のお菓子作りで見えた力を、片っ端から伝えていきました。
からからに乾ききった自信に、一滴一滴言葉がしみわたっていったのか、お菓子をやく作業にも力が入っていきました。


お菓子が焼きあがる前には、甘く美味しそうな匂いが家中に広がります。
美味しそうな匂いと、初めてなのにプロ級の出来上がりに、疲れ切っていた家族も感動して歓声が上がりました。
あの感動は今も忘れられません。


もう一度生きる力がよみがえった。大丈夫、この子は何とか生きていける。
あのどん底を味わった経験がなければ、この感動は分からないことです。
息子が一生懸命焼いたお菓子は、初めてなのにプロ級でした。
あれほどお菓子の味をかみしめたことはありません。
ゲームから離れてできることがある
もう一度生きたい!自分にできることはなんだろう。。
息子はそう考えたのでしょう。
クッキー
息子は毎日レシピを検索し、レパートリーは増え続けました。
緻密に作業する息子が作ったものはどれもとびきりおいしく、家族の「美味しい美味しい!!」という歓声が、また自信になっていきました。
お菓子作りは生きる力につながる
家族に広がる幸せの輪
お菓子作りがセラピーにもなるとは全く思いつきませんでした。
焼いている時に家中に広がる美味しい香り
自信がからっからに無くなっていた心と体に、幸せな香りがきっと浸み込んでいったに違いありません。
そして疲弊しきっていた家族からも「おいしい~!」「すごいよ!!」
賞賛の嵐は、人を喜ばせたという大きな自信にもつながると分かりました。
人を喜ばせると自信になる


美味しいから家族も喜ぶ、喜んでくれると大きく自信がたまる。好循環が始まります。
人とは会えないどん底にいる時、自信を入れてあげられるのは家族だけです。
家族がしっかり自信を入れることで、どん底の状態から抜け出せるのです。
まとめ 自信を取り戻して進学へ
新学年に合わせて新しい学校へ飛び込む
息子はお菓子作りやパン作りに一心不乱に取り組んだ後、
ホームセンターへ行きたい
と言って、今度は工作やモノ作りを始めました。
お菓子作りと同様に、作業に取り組むことで集中力が増し、思考力も少しずつ取り戻すことができました。
自分はこのまま終わるはずはない。
もう一度やり直したい。
息子の魂の叫びのようでした。
自分を奮い立たせ、新学年に合わせて、現地の新しい高校へ飛び込んでいきました。
ただのお菓子作りに終わらせない
お菓子作りは、心のセラピーとして大きな大きな力となりました。
ただ作業を見ていてはセラピーになりません。
簡単でもいいので、とにかく賞賛を伝えていくことです。
- お菓子作りで見える力を、片っ端から伝えていくこと
- 心から、具体的に、力があることを伝えること
- 家族と出来上がりを大いに喜ぶこと
脳内にリフレインするそんな言葉の力が、自信を使い切ってしまった子供に、最高の栄養と薬になります。
勉強にも応用できる力は生きる力に
お菓子作りで見えた集中力、準備力、イメージ力、段取り力。
実は、こんな力は学校でも使える大きな力になるのです。
そして人生に大切な力です。
テストには表れないお子さんの力をぜひ見つけてあげてください。喜んでもっと作ってくれて、いいこと尽くし。
お菓子作りは魔法の力。美味しいお菓子を囲んで、ぜひ素敵なティータイムを。

