【不登校・対人恐怖症克服】親ができるたった一つのこと

対人恐怖症、心身ともに繊細で生きづらさがあったとしても、それは一生変わらないのでしょうか?子供の性格、気質など、それらは生涯変わらないものでしょうか? 

子供の本当の良さは、いま全て見えるわけではありません。逆境、試練にあい、それを乗り越えようと必死にもがく間に、本当の良さ、力が出てきます。試練はそのためのハードルとも言えます。

目次

ひきこもりを克服する親の向き合い方

不登校、ひきこもりは乗り越えるまで、本当に大変なことです。しかし、その試練を克服しようと改めて子供の力を見直し、伝えようとしていくと、世界が変わり始めます。恐怖、試練があって初めて、どんな声かけがいいのか、どんな向き合い方がいいのか、必死で考え始めるからです。私がそうでした。穏やかな日常の延長では、やはり必死で良さを探そうとは思いません。むしろ、まだここができない、もっとこうすればいいのに、と期待から責めになっていたことでしょう。

一滴一滴、自信を満たしていくように、子供の良さ、力を伝えることで、子供は自信をつけていきます。その自信が大きく増えてくると、本来もっている自分の強みを発揮しようと子供自身に直感がおりてきます。気づきがでてきます。そして、一歩の行動が始まります。自信、自分の強みの両輪が、やがて対人恐怖症を克服する力となっていきます。

自信をつけ、自分の強みを発揮し始めること。この心の土台は、これから人生の荒波をわたり、生き抜く力になっていきます。

良さ、力はだれにでもある。それを日々の様子から見つけ、都度伝えていく。その繰り返しで、子供は自分の強みを柱として、一歩の行動を始めます。不登校・引きこもりは、親子共にあり方、良さを見つめ直し、これから人生を強く歩み始めるチャンスとも言えます。

対人恐怖症の克服

順調にきていたはずの子育てが、ある日予想外のことに直面する。学校に普通に行ける日常が途切れて初めて、穏やかだった日常は決して当たり前ではないと気づきます。今から10年ほど前。娘が不登校、ひきこもり、対人恐怖症で人に会えない。そんな状況に追い込まれ、私は死に物狂いで解決策を求めて手探りの日々が始まりました。

ひきこもりのきっかけ 集団の中の孤独

当時家族で駐在中だった我家。より勉強に熱心な環境をと、評判のいい学校へ娘自ら転校を志願し、希望に満ちた毎日が始まるはず、でした。しかし希望とは裏腹に、初日からクラス中の無視にあい、グループプロジェクトも一人、先生も放置。学校の人種構成を事前に調べるべきでした。唯一のアジア人に優しい場所もあれば、排他的な土地柄や校風もあると気が回らなかったのです。

事前の知人の口コミもあてになりません。白人の知人には評判が良くても、アジア人が一切いない、白人のみの学校の背景に気づくべきでした。人種差別が存在する、ということに。駐在2度目ですから語学も学校のシステムにも慣れており、今まで交友関係に苦労していなかった娘には、初めての孤独の日々でした。

集団の中の孤独ほど、苦しいものはありません。グループプロジェクトも多い授業で、声をかけてくれる人もいない日々が続いた1か月で娘の心はむしばまれ、ついに人が怖いと言い始めました。やむなく学校をやめて自宅学習、ホームスクールを選択しましたが、つまり勉強に手がつかないひきこもりとなりました。希望が失望へ変わり、しかも全員から無視され続けたトラウマにより、娘はその後長い間人が怖いと苦しみ続けることになりました。

勉強できない 引きこもり中にしていたこと

ホームスクール申請のために、カリキュラムを探しテキストも準備しても、娘の心は閉じたまま。朝は起きれず、目はうつろ。体調も常に悪そうでした。できることは日本語の本を読み、写経したり、気づきを私に説明したり、料理をすることでした。大好きな韓国語の勉強、韓国語のドラマやバラエティ番組、K-POPを見ることも心の慰めとなりました。

娘は勉強に向かえず、代わりに自己啓発本が好きで、その気づき、学びを私によく話していました。私は耳を傾け、娘の気づき、娘の学びの力を伝え続けました。娘の気づきにはなるほど!と思うことが多かったのです。でも、勉強には向かえない、、、振り返れば、そう思う私の欲は捨て、気づきの深掘りや視点の良さに集中すべきでした。

郊外へ散歩に連れ出す努力も続けました。車で少し走れば広大な国立公園が広がります。木々に囲まれた湖、針葉樹が続く森の中のハイキング。鳥のさえずりを聞きリスを眺め、自然が心を癒してくれるかも、という淡い気持ちでよく娘をのせてドライブをしました。途中のアンティークショップなどで娘のインテリアの感性を磨いたり、変化を取りいれる努力もしてみました。ただ、娘にはそう簡単に変化は見られませんでした。人で傷ついた心は、やはり人が癒してくれるのが一番だったのだと後で気づきました。

自信を入れる

ひきこもりになった2年間、娘の良さを必死で探す日々でした。どんな力が見えたのか。

・気づきを深掘りする力

娘は、大量の教科書を要領よく読んで暗記し、空欄を埋める試験には不向きです。でも、じっくり本を読んで気づきを言葉で説明するのがとても得意だと、ひきこもりになって初めて気づきました。自分の言葉で掘り下げ、本質をつくのが非常に上手だと伝えました。

学校にいないので、話す相手は私一人。「うんうん、それは大きな気づきだね!」などと喜んで耳を傾ければ、嬉しそうに話を続けます。「試験という点数」には表れない娘のチカラは、こんなことが無ければ目を向けようとはしなかったはずです。学校の成績があまり取れない、要領が悪いなどとレッテルを貼ったままでした。話すというプロセスは、考えを整理でき、まとめ、人に伝えるという、またとない大きなチャンスだったと、後年分かりました。それは、社会人になった今、出張先での気づき、報告書にまとめる気づきなどで大きく役立っています。

・料理の力

料理も私と違って、ささっとアレンジして作ってくれます。そんな独創性、料理のアイデアの力も伝えました。特別なものを作るわけではありませんが、太巻きや韓国料理、その他教えてもいないのに、きれいにきっちり作り上げ、家族に喜ばれていました。これが後に大学で人をつなげ、対人恐怖症を克服する大きな力になるとは当時全く想像していませんでした。お菓子作り、料理が好き。これは人をつなぎ、喜ばせる、大きな武器の一つになります。

自信はミリ単位で増えていく

大学進学までの2年間。力を伝え続けても、目に見えた変化がなかなか出てこない娘に当時の私は、この先どうなるのか、絶望感の日々でした。持っている力が今後どう展開されるのか、その時にはまだ分からなかったからです。

これでは高校卒業資格を得た後、働くことも心がもたない。日本に帰っても心が病んでいたら同じこと。とりあえず地元の大学にでもなんとか進学し、その間に心をきたえ直して、将来へつながればと祈る日々でした。そんな中でも自信は見えないところでミリ単位で増えていたのでしょう。

進路を探る旅に出たり、日々の声かけの積み重ねから一滴一滴自信はたまっていたのでしょう。「やっぱり人に会いたい!」そんな気持ちが芽生えてきました。一方、まだ怖い、距離感が分からない。そんな気持ちと拮抗します。それを乗り越えるのは、やはり自信の力。自信を増やすことを親が信じて続けること。それが、恐怖を乗り越える力になっていきます。

対人恐怖症を克服した娘の力

「このままではいられない、もう一度人生をやり直したい。」まだまだ人への恐怖を抱えたままの娘でしたが、大学入学を控え、そんな魂の叫びを娘から感じました。「人との距離感が分からない」と泣き叫んでいた娘も、人生をやり直したいと勇気を振り絞って、世界中から大勢の学生が集まるキャンパスに飛び込んでいきました。恐怖がまだ大きく残る娘を支えたのは、引きこもり中に伸ばした力だったのです。それは、料理をする力、K-POPのダンスの力、そしてとことん孤独を味わったから分かる、人への思いやりの力でした。

1人への思いやり

大学は、地元の高校と違い、全国から集まる学生、または世界中から集まる留学生で一杯です。今までの過去を知る人もいなければ、高校のように、がっちり固まっている地元のグループもまだ存在しない。新入生歓迎のイベントは、もう一度やり直したいと必死で通い始めた娘には、ぴったりだったのです。

娘は勇気を出してイベントに参加し、たくさんの若者に声をかけていきました。留学生も、国内からの学生もみんな初めて家から離れ、孤独です。だから娘に声をかけられれば誰もが嬉しくなり、娘の簡単な手料理をふるまうパーティーに喜んで参加し、人の輪が広がり始めました高校で集団の孤独を嫌と言うほど思い知った娘は、人から声をかけられることの喜びを知り抜いていたのでしょう。

2料理の力

料理がこれほど威力を発揮するとは思いませんでした。味気ないキャンパスの料理に辟易としている学生には、たとえラーメンにちょっとのおかずを添えただけでも歓声があがり、大いに喜んでくれました。様々な国の留学生に声をかけ、人をつなぐまたとないチャンスとなりました。そこで、「今度キャンプをしよう」「こんなイベントをしよう」、などといろんなアイデアも生まれ、「主催してくれない?」と頼まれるようになりました。自分でイベントをまとめあげることは、押し出しが強そうな外国人も意外と苦手です。極端にいえば、ラーメンを作れて人に声をかけるちょっとの勇気があれば、「人をつなぐ力、イベントを主催する力」につながるのだと、つくづく思い知りました。

もともと人をつなぐ、人の間を泳ぐのが得意な子供もいるでしょう。でも、繊細、傷つきやすい、声をかけにくい、うちの子には無理、などとラベルを貼る必要はないとわかりました。超繊細な娘でさえも、長い間のひきこもりという試練があったからこそ、人と会いたい!そんな大きな反動が自分を変える原動力となりました。人は変わります。変われます。思いもつかない小さな力から、人をつなぐ、イベントを主催する、という力に発展できるのです。

ラーメン一杯で人が喜んでくれる。人が喜んでくれることが、大きな自信となり、親からだけでなく、人からも自信を増やすことができたことが、対人恐怖症を癒す大きな力となりました。

3ダンスの力

引きこもり中に教科書を広げられなかった娘ですが、K-POPを見ている間にダンスの知識が増え、大学に入ったらすぐにダンス部に入りました。見ているだけでうまくなっていた娘は、「教えて」と人から頼まれることが増えました。教えてあげれば喜ばれる、ステージに立てば人の感性を浴びると、好循環が始まりました。

ダンスが好きなお子さんは多いと思います。ダンスは人をつなぎ、得意ならば教えたり、コミュニケーションの大きな武器となります。人に教えて喜ばれる。これは自信が増える本当に大きなことです。

好きなことは武器になります。ダンスでなくても楽器が好き、歌が好き、手芸が好き。たとえ今特定の好きなことが無くても、性格の良さなどを伝えていくと、本来持っていた芽が芽吹いてきます。どんな小さなことでも、人に教えられることにつなげられます。自分の好き、や当たり前にやっていたことで人が喜んでくれる。この体験は自信を増やすだけでなく、「将来の仕事の喜び」にもつながっていきます。

子供の良さをひきこもり中に見つけ、伝えていくこと。些細なことに見えますが、実はひきこもりを克服し、将来への種まきになる、大きな原動力となっていきます。

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